Before(改善前)
車のリモコンキーの工法転換によるコストダウンの事例をご紹介します。車のリモコンキーは、車メーカーのエンブレムがメッキ品などで組み込まれていることが多く、エンブレムの上をクリア樹脂で覆い被せ、奥行き感を表現している物が多数存在します。これらの工法の多くは射出成形で作られているのですが、金型のコア側(部品の裏側に該当)に凸形状でエンブレムを立体的に彫り込み、そこにクリアの樹脂を射出成形で充填させます。充填完了後に金型から樹脂を離型させると、クリア樹脂の裏側にエンブレム形状が凹み形状で転写された成形部品が出来上がります。成形部品の裏側のエンブレム形状(凹み形状)部に真空蒸着加工(真空中で金属を加熱して気化させ対象部品に均一に付着させる工法)を用いて金属膜を皮膜させてミラー調に加飾することで、表から見た際に、クリア樹脂層を通してエンブレム部分を立体的に見せることが可能となります。この工法はリモコンキーのエンブレム以外にも様々な分野で採用されておりますが、プラスチックの成形品に蒸着加工を施す場合は、蒸着単体では密着力が弱いため、アンダーコート(下塗)/蒸着加工/トップコート(上塗)※要求仕様によってはミドルコート(中塗)の工程が必要となります。本工法を採用した場合、工数が多い上、塗装工程で異物付着の不良などの発生懸念もあるため、部品単価が高額になってしまうという問題が生じてしまいます。
After(改善後)
改善策として、塗装・蒸着工程を使わず立体感あるミラー調のエンブレムを表現する方法として、金属箔を使ったホットスタンプ工法もしくはミラー調の蒸着フィルムを使う工法の提案を行わせて頂きました。具体的な工法の手順としては、これまでの工法と同じようにエンブレムに凹み形状が転写できる金型を使って射出成形を実施した後、金属箔にてホットスタンプ加工を行った別のフラットな部品もしくはミラー調の蒸着フィルムを貼り合わせるだけで、裏面に蒸着したような表現が可能となります。塗装工程を必要としないため、プラスチック製の塗装治具の射出成形、および成形するための金型の起工が不要となり、イニシャル費用の削減にも繋がります。
改善効果
改善効果として、この工法は、既存工法より2~3割安い価格を提案することができました。採用には至りませんでしたが、非常に面白い工法として注目頂きました。